オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

2025年、ハラスメント対策は新たな局面へ──カスハラ・就活セクハラ・情報開示義務の強化

2025年、ハラスメント対策をめぐる法制度が大きく動き出しました。

「カスタマーハラスメント」「就活セクハラ」など、これまでグレーだった領域にも明確なルールが定められつつあります。本記事では、2025年6月に成立した法改正を中心に、今後の実務対応のポイントを整理します。


カスタマーハラスメント対策が義務化へ

まず注目すべきは、いわゆる カスハラ(カスタマーハラスメント)対策の義務化です。

2025年6月4日、改正「労働施策総合推進法」が成立。これにより、事業主はカスハラ対策を講じることが法的義務となります。

ポイントは以下の通り:

  • 労働者が1人でもいれば対象(個人事業主でも該当)

  • 違反時には報告徴求命令や勧告、公表といった行政指導の対象に

  • 施行は「公布から1年6か月以内の政令で定める日」=最短で2026年10月頃の施行が見込まれる

従来、カスハラは企業努力に任されていた面がありました。しかし、今回の改正により、明確に「雇用管理上の義務」と位置づけられたことは、企業にとって大きな転換点となります。

www.businesslawyers.jp


就活セクハラ対策も法制化

今回の改正では、求職者等に対するセクハラ防止措置も新たに義務付けられました。

就職活動中の学生やインターンシップ生といった「労働者ではない人々」も、企業との接点において被害を受けやすい存在です。

  • 対象:求職者、インターン、内定者など

  • 施行:カスハラ同様、2026年10月頃の見込み

企業は「採用過程」にもセクハラ防止措置を講じる必要があり、対応の幅が広がります。


情報公表義務の拡大で透明性アップ

さらに、ハラスメント対策に関する情報公表義務も強化されます。

  • 対象:企業のハラスメント対策に関する方針、体制など

  • 一部施行予定:2026年4月1日

近年では「どのような会社か」が求職者の選択基準となる中、企業としても公表内容の質が問われる時代に突入しています。


フリーランス新法にも注目

2024年には「フリーランス新法」も成立し、発注側事業者にはフリーランスへのハラスメント防止措置が義務付けられました。

雇用関係の有無にかかわらず、広くハラスメント対策が求められていることがわかります。


主なハラスメントと対応法一覧(2025年時点)

ハラスメントの種類 関連する法律
パワハラ 労働施策総合推進法
セクハラ 男女雇用機会均等法
マタハラ・パタハラ 育児・介護休業法
カスタマーハラスメント 労働施策総合推進法(2025年改正)
就活セクハラ 労働施策総合推進法(2025年改正)
フリーランスへのハラスメント フリーランス新法(2024年施行)

今後の実務対応で押さえたいこと

  • 社内規程やハラスメント防止指針の整備(採用プロセスを含む)

  • 苦情相談窓口や社内研修の充実

  • 情報公開ページの見直し・更新

厚生労働省からは指針やリーフレットが順次公表される予定です。特に中小企業こそ早めの準備が重要です。


まとめ:ハラスメント対策は「予防から説明責任へ」

これまでのハラスメント対策は「社内の防止策」が中心でしたが、これからは「社外への説明責任」や「雇用以外の関係性」までがカバー範囲となります。

多様な働き方が広がる中で、いかに全ての人が安心して関わり合える環境をつくれるかが、企業の信頼性や採用力に直結する時代です。

2026年の施行を前に、まずは「今の状態を可視化」し、「どこを整える必要があるのか」を見極めることが第一歩になるでしょう。