オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

「すべて自分のせい」も、「全部人のせい」も危ない。健全な“責任の捉え方”とは?

仕事でミスをしたとき、あなたはどう捉えますか?

「自分の努力不足だ」「もっと確認すべきだった」と反省する人もいれば、「運が悪かった」「あの人の指示が曖昧だった」と、環境や他人の影響を考える人もいるでしょう。

DIAMOND Onlineに掲載された記事『仕事で失敗したとき「自分の責任にする人」と「運のせいにする人」、幸せになれるのはどっち?』では、この“責任の捉え方”が、その人の成長や幸福感にどう影響するのかが論じられています。

diamond.jp

自分のせい? 運のせい?──「統制の所在」という考え方

この記事では、「統制の所在(ローカス・オブ・コントロール)」という心理学の概念が紹介されていました。

これは、物事の結果を「自分の行動や努力の結果」と捉える「内的統制」か、「運や他人、環境のせい」と考える「外的統制」か、という視点です。

内的統制を持つ人は、失敗を自らの課題として受け止め、改善に向けた行動を起こそうとする傾向があります。その姿勢が成長を促し、自信や自己効力感の向上にもつながります。

一方、外的統制を持つ人は、運や環境のせいにして物事を受け流しやすくなります。成長への意欲は低下するかもしれませんが、感情面では平穏を保ちやすく、ストレスの緩和には効果的ともいえます。

どちらが幸せか?──“使い分け”が鍵

記事の結論は明快です。

「成長や成果を重視するなら内的統制、心の平穏やストレス回避を重視するなら外的統制が有効」。

つまり、どちらかに偏るのではなく、状況に応じて“使い分ける”ことが大切だというのです。

これは、働く上で非常に現実的な考え方だと感じます。すべての出来事を「自分のせい」と捉えすぎると、メンタルが持たなくなる。一方で、何でも「運のせい」にしてしまうと、何も変わらないまま同じ失敗を繰り返してしまうでしょう。

東洋経済ONLINEの視点:「健全な“他責思考”も必要」

一方で、東洋経済ONLINEにはこんな記事もありました。

『できる人は健全に「他者のせい」にしている~「自責思考」には実は限界がある』

こちらでは、「自責思考」が行きすぎると、自分を追い詰めるだけになりかねないことが指摘されています。構造的な問題(ルールや仕組み、情報の伝達不足など)にまで「自分のせい」と捉えてしまえば、改善は難しくなりますし、疲弊してしまいます。

重要なのは、「誰が悪いか」ではなく、「何を改善すればいいか」という視点です。

toyokeizai.net

この記事では、問題を構造的に捉える「健全な他責思考」の実践方法として、SCAMPER法というフレームワークが紹介されていました。

  • Substitute(代用)

  • Combine(組み合わせ)

  • Adapt(応用)

  • Modify(修正)

  • Put to another use(転用)

  • Eliminate(削除)

  • Rearrange(並べ替え)

自分を責めるばかりでなく、「そもそもこのマニュアル、分かりにくくない?」「プロセスが回ってないよね?」と、仕組みの問題を見つめ直す視点が求められているのです。

自責 × 他責 の“ハイブリッド思考”が働き方を変える

両方の記事に共通するのは、「どちらか一方に偏ることのリスク」です。

  • 自責思考は、成長を促す。でも、抱え込みすぎると自分を潰してしまう。

  • 他責思考は、気持ちを軽くする。でも、何も変わらず、周囲との信頼も失いやすい。

だからこそ、仕事で失敗したときはこう考えてみてはいかがでしょうか。

  1. 「この失敗から、自分にできることは何か?」

  2. 「この状況を改善するには、仕組みや関係性のどこに課題があるのか?」

そのうえで、自分が改善できる行動と、組織やチームで見直すべき仕組みの両面を整理する──これが、現代の働き方に必要な「責任の捉え方」なのかもしれません。