オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

OJTは9割が実施…なのに育たない?“バラつき”を潰す構造化OJTの話

「若手には主体性がない」と言うのに、OJTは“属人化”したまま…なぜ?

以下は、ALL DIFFERENT株式会社(旧トーマツ イノベーション)が2025年5月15日に公表した「人事部の意識調査(OJT編)」をベースに、要点を整理しつつ、HRD(人材開発)視点で“次の一手”まで落とし込んでみました。


1) ニュース要約(何が起きた/何が変わる)

調査の前提

結果の骨子(3点)

  1. 人事が感じる“若手の最大課題”は、新入社員も若手(2〜3年目)も「主体性・積極性」

  2. OJTは9割以上が実施する一方、最大の悩みは「OJT担当者によってやり方/精度がバラつく」(規模を問わず上位)

  3. 課題は見えているのに、3割以上が改善策を具体検討できていない

ひと言で言えば、「主体性を求めるほど、OJTの設計の粗さが露出する」という構図です。


2) 影響(誰に/何に効く)

影響が出やすいところ

  • 現場のOJT担当者:教え方が“個人技”になり、成果も疲弊も担当者ガチャ化しがち

  • 若手本人:上司・先輩が変わるたびに「正解」が変わり、動けなくなる(=主体性が出にくい)

  • 人事・育成企画:研修を足しても現場で再現されず、「やった感」だけが残りがち

ここがミソ:「主体性」は個人資質の話に見えて、実は“環境設計(期待・裁量・支援)の品質指標”になりやすい、という点です。

離職・定着にも波及

新卒3年以内離職率は、直近公表でも大卒33.8%/高卒37.9%など“3割前後”が続いています。
(厚労省→ https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html → 令和4年3月卒の3年以内離職率)

OJTのバラつきは、スキルだけでなく「安心して相談できる/成長実感がある」の差になり、定着に効いてきます。


3) 対応(行動ベース:就業規則/周知/手続き/システム等)

まずは“主体性”の言語化から(抽象語の解像度を上げる)

「主体性がない」は便利な言葉ですが、現場では行動に落ちません。おすすめは分解です。

  • 例:主体性を“観察可能”にする(行動指標)

    1. 事前準備:会議前に論点を1つ持ってくる

    2. 相談の型:相談時に「現状/仮説/選択肢/希望」をセットで出す

    3. 改善提案:月1回、業務のムダを1つ見つけて提案する

この手の定義があるだけで、若手は「何をすれば主体性扱いされるか」が見えるようになります。

管理職ならここ:「主体性=放任」になっていないかを点検。期待水準(何を/いつまでに)と支援(週1の壁打ち等)がセットだと、部下は動きやすいです。


次に、OJTを“構造化”する(属人化を設計で潰す)

調査が示す最大課題は「バラつき」でした。
なので、打ち手も“標準化”が中心になります。

  • OJTの最低限テンプレ(おすすめ)

    1. 30-60-90日の到達目標(業務・行動・関係構築)

    2. 週次1on1(15分でも可):事実→解釈→次の行動の順で確認

    3. 観察とフィードバックの型(SBI:Situation-Behavior-Impact など)

    4. 担当者向けミニ研修(2時間×1回でも“共通言語”は作れる)

  • 仕組み化の置き場

    • 育成計画:人事システム/LMS/共有フォルダにテンプレ固定

    • 記録:週次メモをフォーム化(5項目程度)

    • 評価:OJT担当者の貢献を評価項目に“少しだけ”入れる(やり損にならない)

社員側はここ:「主体性を出せ」と言われたら、相談の型を先に提示すると得です。
例)「現状はA、原因仮説はB、選択肢はC/Dで、私はCで進めたいです。懸念点だけ見てください」


「心理的安全性」と“構造と明確さ”はセットで

若手が動けない背景に「失敗したら詰められる」があると、主体性は出ません。
Googleのre:Workでも、心理的安全性をチーム要素として扱い、あわせて「構造と明確さ」も挙げています。
(Google re:Work→ https://rework.withgoogle.com/intl/jp/guides/understanding-team-effectiveness → 5要素の説明)

なので現場では、

  • 叱る前に“期待の明確化”(何がOKで何がNGか)

  • ミスの扱いをルール化(報告が早いほど評価する、など)
    が効きます。


4) よくある質問(3〜5問)

Q1. 「主体性」って、結局なにを指せばいい?
A. “性格”より“行動”で定義するのが実務向きです。例:事前準備、相談の型、改善提案など観察可能に。

Q2. OJTのバラつき、いきなり統一は無理です…
A. まずはテンプレ1枚(30-60-90日目標+週次1on1項目)だけ固定すると、一気に揃いやすいです。

Q3. OJT担当者が忙しくて時間が取れない。
A. 週次は15分でも回ります。ポイントは“長さ”より頻度。記録はフォームで省力化が定石です。

Q4. 大企業と中小で打ち手は変わる?
A. 調査でも規模で重視点が少し違います(小規模は目標明確化、大規模は担当者の心構え等)。
ただ、共通して効くのは「共通言語(テンプレ)+短い運用サイクル」です。

Q5. 離職対策としてOJTで何を見ればいい?
A. “技術習得”だけでなく、**成長実感(できたの言語化)と相談導線(誰に・何を・いつ)**を点検するとズレが減ります。離職率データは厚労省の公表をベンチマークに。


5) 参考リンク


まとめ+一言

主体性を嘆く前に、主体性が“出せる形”にOJTを整えるのが近道です。
まずは「主体性の行動定義」と「OJTテンプレ1枚」から。ここを押さえると、現場の会話が変わり始めます。