オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

「話しやすい」だけでは足りない——新入社員が選んだ理想の上司から見える、育成の本質

明治安田生命が毎年実施する「理想の上司」調査。

2026年版の俳優・歌手部門では、1位がムロツヨシさん(3年連続)、2位が鈴木亮平さんという結果でした。

これを芸能人の人気投票として読むのは、少しもったいないです。

この2人が並んだことに、若手が職場に求めるものの本質が表れています。


2人が示す「二つの上司像」

ムロツヨシさんが支持された理由は「親しみやすさ」「安心感」「おもしろさ」。一方、鈴木亮平さんは「頼もしい」「知性的」「ストイック」というイメージで支持されています。

つまり、新入社員は2種類の上司を理想として挙げています。相談しやすい上司と、尊敬できる上司です。

そしてここが重要なのですが、どちらか一方では足りません。

話しやすいだけだと「居心地はいいけれど、成長できるのか分からない」という状態になります。逆に仕事ができて尊敬できる上司でも、話しかけにくければ、早期相談は起きません。ミスや不安を抱え込む原因になります。

若手が求めているのは、この2つを同時に持つ人です。


「共感」と「信頼」を両立させる

整理すると、上司に必要な要素はこの2つです。

共感——安心して話せる。否定されない。困ったときに相談できる。

信頼——仕事の基準がある。判断に一貫性がある。学ぶべき姿勢がある。

「大変だったね」で受け止めるだけで終わるのが共感だけの上司。「次はここを意識してみよう」「この仕事ではこの水準を目指してほしい」まで伝えられるのが、共感と信頼を両立させた管理職行動です。

今の理想の上司像は、優しい人でも厳しい人でもなく、話しやすいけれど基準を持っている人です。


人事・管理職がすぐ動けること

① 管理職研修に「傾聴+基準提示」をセットで入れる

傾聴や心理的安全性は大事ですが、それだけでは育成の場として弱くなります。まず話を聞き、事実を整理し、チームの基準を伝え、次の行動を一緒に決め、期待を言葉にする——この流れをセットで練習できる研修設計が必要です。受け止めるだけでなく、方向を示すことが管理職の役割です。

② OJT担当者の役割を曖昧にしない

「面倒を見ておいて」「分からないことがあれば教えて」では、担当者によって育成の質に差が出ます。業務の進め方を教える人、相談の入口になる人、フィードバックする人、仕事の基準を伝える人——この役割を明確にすることが先決です。

若手にとって、何ができれば合格なのか、どこからが改善点なのかが分からない職場は、地図なしで歩くようなものです。

③ 1on1を「雑談だけ」にしない

毎回この3点を確認するだけで、育成の場として機能しやすくなります。困っていることはあるか。最近できるようになったことは何か。次に伸ばしたいことは何か。相談・承認・成長期待のバランスが自然と取れます。

「何でも相談してね」だけでは、若手は何を相談してよいか分からないことがあります。「業務量」「人間関係」「分からない作業」「今後の成長」のように相談テーマを具体化すると、話しやすくなります。


よくある疑問に答える

若手は「叱られたくない」だけなのでしょうか? そうとは限りません。安心して相談できる関係のうえで、納得感のあるフィードバックを求めていることがあります。感情的に叱ることより、基準と期待を伝えることが大事です。

親しみやすい管理職でないとダメですか? キャラクターを変える必要はありません。挨拶する、途中で遮らず聞く、相談後に放置しない——こうした小さな行動の積み重ねが、相談しやすさにつながります。

基準を伝えると厳しいと思われませんか? 伝え方次第です。「なぜその基準が必要か」「次に何をすればよいか」まで伝えると、評価ではなく育成として受け止められやすくなります。


まとめ

今回のランキングから見えてくるのは、若手が上司に求めるものの解像度の高さです。

話しやすいが、流されない。優しいが、基準を曖昧にしない。受け止めるが、成長への期待も伝える——この3つを同時に体現できる管理職が、これからの職場で求められています。

人事・管理職研修の設計に引き直すなら、必要なのは**「傾聴力」と「基準を言語化する力」をセットで育てること**です。どちらか一方では、理想の上司像には届きません。


参考:明治安田生命「2026年度 理想の上司/理想の新入社員」調査(2026年2月25日)