オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

「研修はあるのに辞める」——新入社員の早期離職は、配属後の設計で決まる

新入社員研修はちゃんとやっている。なのに、配属後に早期離職が出る。

この違和感を感じている人事担当者は、少なくないと思います。その正体が、2026年3月にイー・コミュニケーションズが公表した調査で、かなりはっきり見えてきました。

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数字で見る「育成の現実」

調査対象は従業員1,000人以上の大企業の人事・人材開発担当者110名。出てきた数字が、なかなか重いです。

  • 過去3年以内の新入社員の離職理由として「研修・教育体制への不満」が挙がったことがある、と答えた割合が69.1%
  • 配属後のフォローアップ研修・学習支援を「十分に実施できていない」企業は3割超
  • 離職者からの不満の上位は、入社前イメージと実務のギャップ(51.3%)、理解度に応じた教育が受けられなかった(48.7%)、基礎スキルが定着する前の現場配属(47.4%)

「教え方が雑だった」という話ではありません。採用時の期待、入社時研修、配属後の立ち上がり支援が、一本の線でつながっていないことが問題になっています。

ひと言で言えば、「入社時の点の研修」はあるが、「配属後の線の育成」が弱い。ここが定着の分かれ目です。


「大企業だから大丈夫」は通用しない

厚生労働省のデータによると、令和4年3月卒の大学卒の3年以内離職率は33.8%。従業員1,000人以上の大企業に限っても27.0%あります。規模だけでは解決しない話です。

早期離職は「本人の耐性の問題」に見えがちですが、実態は組織の受け入れ設計の問題として表れることが少なくありません。

人事にとっては採用ROIの問題、現場にとってはOJTの属人化と育成疲れ、新入社員にとっては孤立感による離職——それぞれに影響が出ます。


解決策は3本柱

① オンボーディングを「入社日イベント」で終わらせない

入社式や集合研修は「点」です。必要なのは、内定前から配属後まで続く「プロセス」の設計です。

内定〜入社前は、仕事内容・配属可能性・期待役割をできるだけ具体的に伝える。入社後1か月は、基礎研修に加えて相談先・評価基準・最初の成功体験を明示する。1〜3か月は週次か隔週で1on1を入れ、つまずきを早めに拾う。3か月〜1年は月次面談とキャリアの見通し提示を続ける。

今回の調査でも、今後強化したい点のトップは「配属後のフォローアップ研修・学習支援の充実(58.2%)」でした。企業側もそこに課題があることは認識しています。

② 「相談できる関係性」を制度で用意する

新入社員は、直属上司にすべてを話せるとは限りません。メンター・バディ・相談窓口の複線化が効きます。

ポイントは3つです。メンターの役割を「評価者」ではなく「相談役」に寄せること。面談頻度を最初に決めておくこと。匿名相談窓口の存在を入社時だけでなく繰り返し周知すること。

「制度があります」だけでは届きません。使い方まで伝えて、初回接点まで設計することが大事です。

③ 現場管理職に「育成の型」を持ってもらう

フォロー不足の背景には、人事と現場の連携不足があります。人事が制度を作るだけでも足りず、現場に丸投げでも足りません。

管理職が最低限回せる育成行動の型——1on1の基本、フィードバックの言い方、若手のつまずきサインの見立て、配属初期の業務の切り出し方——この4つをそろえるだけで、現場の動き方はかなり変わります。


明日から動けるアクション

まず手をつけやすい順に並べると、入社後3か月のオンボーディング標準フローを全部署共通で作ること、30日・60日・90日の確認項目を決めること、人事と現場の役割分担を1枚に整理すること——この3つです。

「研修を厚くする」より「配属後にひとりにしない仕組みを作る」ほうが、定着には効きます。


まとめ

新入社員の定着は、「いい人を採る」だけでは決まりません。入社後に「この会社で成長できそうだ」と思える設計があるかどうかで、大きく差がつきます。

今年の新入社員受け入れが一段落したこの時期こそ、研修そのものより、配属後のオンボーディング導線を見直すタイミングかもしれません。


参考:イー・コミュニケーションズ「2026年版 大企業の新入社員研修に関する実態調査」(2026年3月)/厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」