オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

「印象のすれ違い」が人間関係をこじらせるとき

同じ職場にいるのに、どうもかみ合わない。
悪気はないのに、なぜか誤解されてしまう――。

そんな「モヤモヤ」を感じたことはありませんか?

現代ビジネスの記事で紹介されていた心理学者・舟木彩乃さんの著書『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(集英社インターナショナル)では、新入社員同士の“配属争い”を通じて、職場に潜む「印象操作」と「すれ違いの心理」を描いていました。

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すれ違いの始まりは“印象のズレ”から

記事に登場するのは、PR会社に勤める控えめな新人・矢野さんと、明るく積極的な“自称インフルエンサー”の同期・Hさん。

本来矢野さんの担当だったイベント幹事を、Hさんが「私がやります!」と次々引き受けてしまう。
そのたびに矢野さんは「自分はやる気がない人だと思われるかも」と不安を募らせていきます。

Hさんに悪意はなかったかもしれません。
でも、周囲に伝わった“印象”はまるで違う。
この小さなズレが、人間関係のモヤモヤを生むのです。


「わかったつもり」が誤解を深める

社会心理学では、このようなすれ違いを「対人認知」と「認知バイアス」で説明します。

  • 初頭効果:最初に抱いた印象が、その後の評価を左右してしまう。

  • 確証バイアス:自分の考えを裏づける情報だけを集めてしまう。

  • ステレオタイプ:「明るい人=リーダータイプ」「控えめな人=消極的」と決めつけてしまう。

つまり、「自分はただ控えめにしているだけ」と思っていても、相手は「やる気がない」と解釈してしまうことがあるのです。


「相手の言葉をどう受け止めるか」が分かれ道

舟木氏は、職場ストレスの多くは“相手の言葉の受け取り方”にあると指摘しています。

相手の発言を憶測でネガティブに受け止めると、どんどん心が疲弊します。
逆に、「自分の解釈が事実とは限らない」と一度立ち止まるだけで、関係の温度がほんの少しやわらぐのです。


モヤモヤを減らす3つのポイント

  1. 「事実」と「解釈」を分けて考える。
     「Hさんが幹事をした」が事実。「私を軽視している」は解釈です。

  2. 自分の状態をモニタリングする。
     疲れているときほど、相手の言葉を悪く受け取りがちです。

  3. “相手も事情を抱えているかも”と仮定する。
     そう思うだけで、心の余白が生まれます。


対話が、関係をほどく鍵になる

人間関係の悩みの9割は「印象のすれ違い」から生まれる――。
そのすれ違いを減らすいちばんの方法は、“対話”です。

「なぜそう思ったのか」「どう感じたのか」を率直に話し合うことで、
お互いの前提が少しずつ重なり始めます。

わかったつもり、伝わったつもり――
その“つもり”の間に、職場のモヤモヤは潜んでいます。
まずは、すれ違いを解こうとする勇気から始めてみませんか。