オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

人材育成のプロを目指して

7月28日(金)に発行されたメールマガジン「 IDマガジン 第68号」に掲載された鈴木教授のコラムを読み返していると、表題について改めて考えさせられました。

少し引用します。

「やっぱりIDerも、自分はデザイナーだと自覚することから始めて、自分ごとのプロジェクトに取り組み、みんなに喜んでもらえる作品を生み出す人なんです。そして「対象領域を限定した領域依存の専門的な知があるかどうか」でプロか素人かが決まる、という点も踏まえて、プロであり続けたい(プロに近づきたい)ものですね。授業は誰でも行っているが、IDの素養を持つ人がデザインした授業は、「こういう授業が受けたかったんです」と言ってもらえるようになるはずであろう。いや、そうならないとすれば、まだアマチュアであって、プロとは呼べないということなのかな。」

現在、弊社では研修を中心にした事業を行っています。

なので、「こういう研修を受けたかった」と言っていただけるようデザインしています。

先般、高知商工会議所様主催の研修では、参加者の方からそういうお声を頂戴しました。

とても嬉しく思いました。

少しは「プロらしくなってきたかな」と・・・。

しかし、「研修のプロ」は「人材育成のプロ」と同義ではないと考えています。

もっと「人事」のこと、「人」のこと、「仕事」のこと、まだまだ勉強が足りないと思います。

さらに精進が必要です。

 

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インストラクショナルデザインとコーチング

インストラクショナルデザインは、「学びを支援するための方法論やモデルの集合的な考え方」と捉えてもいいと思います。

コーチングは、「教えない学習支援の方法論」といえるでしょう。

と考えると、インストラクショナルデザインの考え方を活用したコーチングができれば、さらに良い「学習支援」のスタイルができるのではないか、と考えております。

今、活用できるであろうモデルとしては、学習への動機づけモデルである「ARCSモデル」が真っ先に思い当たります。

私が実践しているコーチングでは、テーマに関係あるトレンド情報などから入るように心がけています。これは、テーマへの注意と関心を持ってもらうことを狙っております。

その後は、自分史をたどることでご自身も気づいていない「武器」に気づいていただき、テーマへの関連性に結び付けていきます。

その後、GAPモデルを活用して課題設定し、解決の糸口をスモールステップで描いてもらうことで自信につなげます。

コーチングのまとめでは、「お話できてよかった」と感想を頂戴しております。これは、満足を感じていただくことでアクションプランを実践することにつなげるためです。

今後はさらに、インストラクショナルデザインコーチングを融合的に展開していきたいと思います。

 

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人脈形成の支援

東京大学 大学総合教育研究センター 准教授、東京大学大学院 学際情報学府 准教授(兼任)である中原 淳 氏の編集による「人材開発研究大全」という分厚い書籍が発刊されました。

その中では、大学時代から就職後までのキャリア形成、能力向上に関するさまざまな研究知見の論文が掲載されております。

まだ、半分ぐらいしか読めていないのですが、中盤までで興味深かったのが、「OJTと社会化エージェント」で明らかにされた「新卒社員の組織社会化を促す社会化エージェントが3人存在し、それぞれが非明示的な役割分担がなされており、それぞれの行動により組織社会化が促進される」という内容です。

中でも、「人脈拡大を支援」する行為、という点に共感を覚えました。

確かに、新入社員の入社後の反応では、「人間関係」にまつわる不安が語られております。

自身の経験を振り返ってみても、人脈拡大がその後の社会人生活に及ぼす影響が大きかったこともあり、この内容は非常に示唆深く感じました。

今後のOJTに関する研修においては、この点についても啓発していきたいと思います。

 

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新入社員が「メモをとらない」原因仮説

本日は、新入社員研修から約一ヶ月後のフォローとして、各企業様を訪問しております。
とある企業の新入社員に話を聞いたところ、「失敗」に対する不安が大きいとのことでした。
よくよく話を聞いているとメモをとってないことによる失敗が多いことも分かってきました。
新入社員研修では、メモをとることの重要性が必ず教えられているはずですが、なぜできないのか・・・二つの仮説を考えてみました。
一つは、そもそも上司や先輩が教えてくれていることが理解できず、「何をメモして良いか分からない」というものです。
新人にとって、毎日が未知の世界への挑戦です。
ほとんど暗号のような言葉が飛び交っている、分からない言葉だらけの世界。
「メモをとれ」と言われても、何をメモしたら良いかすら分からない。という仮説です。
もう一つは、「メモの習慣がない」というものです。
最近では、ホワイトボードに記述したものをスマホなどで撮影することが一般的になってきています。
このこと自体は悪くないのですが、そのためにメモをとることが億劫になっているのではないか、という仮説です。
いずれにしても、ミスを防ぐためには、早く「メモ」の習慣は身につけておくことが重要です。
面倒ではありますが、一か月ぐらいは辛抱して「メモは?」と指摘し、習慣化して欲しいと思います。
 

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『Structured on-the-job Training』 

OJTのノウハウ本は様々出ていますが、日本語翻訳されていない書籍に『Structured on-the-job Training』があります。

この書籍は、「多くの企業ではOJTが無計画に行われている」ことに対するアンチテーゼと学習理論に基づいて実施することの提言がなされています。

OJTは、上司や先輩が部下・後輩に対して仕事を通じて行う指導のことなのですが、伝統的徒弟制(背中を見て学ぶ、模倣学習、まねぶ)のイメージが強い傾向にあり、なかなか効率的・効果的・魅力的な指導になっているとはいいがたいのではないかと思われます。

Structured on-the-job Training(以下、S-OJT)は、インストラクショナルデザインが重視している「学習者中心の原則」に基づいて構築されています。

それを表す重要な指摘に「もし従業員が学んでいないなら、それは指導者が教えていないからだ。」という言葉があります。

つまり、教える側の責任が大きいということです。

では、S-OJTはどのように進めるのか以下に「S-OJTシステム」と「S-OJTプロセス」を示します。

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ここで重要な点は、S-OJTは1対1で指導を進めるのですが、組織の関与が重要であるという指摘です。

トレーナーに任せきりにせず、フォローをする体制が成果に結びつくと考えられます。

なお、S-OJTを行うことで、そうでないはない伝統的徒弟制と比較して、4~6倍の時間削減と2~8倍の金銭的効果を示したという結果も出ているとおり、効果的・効率的な指導法として注目されます。

いずれにしても、理論を背景にした指導が重要であるということですね。

ドラッカー教授『現代の経営』入門

「マネジメント」とは?という問いに対して、私たちは「管理」と考えがちです。

しかしドラッカーは、「管理」ではなく「機関(システム)」であると定義しています。

マネジメントは、資源をインプットして、社会をアウトプットとして生み出す仕組みであるということです。

私は管理者研修で、「マネジメントは、目的を果たすために、経営資源をやりくりすること」とお伝えしています。

まさしく、ドラッカーの提唱していることと同様だと考えています。

なかでも、マネジメントを行ううえで重要な資源が“ヒト”であり、その“ヒト”とは感情を持っているという基本原則を忘れてはならない、と言っています。

現代社会におけるハラスメント等の問題は、この「感情」を無視してしまった結果起きているのではないかと思います。

人財が最大の能力発揮できるよう、マネジメントをする立場の者は、しっかりと動機づけできるよう工夫することが重要ですね。

 

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4D Leadership

医師であり、神経科学者でもあるビジネスコンサルタントのDr. Alan Watkins著書の「4D Leadership」に、私が常々、社会人学習の考え方で大切にしていた「OS」のバージョンアップか、「アプリケーション」のインストール・アップデートか、という事について言及がありました。

まさに「我が意を得たり」でした。

私を含め、「すべきこと」を最優先し、「行動」することに翻弄される日々に辟易しているビジネスリーダーの方は多いのでは無いかと思います。

しかし、この本では、内省の重要性を問うています。

昨今のリーダーシップのトレンドもリフレクションであり、やはり大切なことなのだと感じます。

また、我々が対話する際、ついつい「一人称」や「三人称」視点で行うことが多くなります。

著者は、「二人称」視点が重要であると述べています。

つまり、「相手」の意見を尊重するということです。

「二人称」視点を意識できるようになれば「人に譲る」事が出来るようになると言っています。

まさに「興譲」の精神です。

この精神は、高次の精神発達が必要であると著者は述べていますが、まずは、日常的に意識することから始めたいものです。

そのためにも、新しいアプリケーション(知識・技能)にばかり目を向けず、OS(人間性)のバージョンアップを心がけていきましょう。

 

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