日本最古の兵法書に『闘戦経』という書物があります。
この書は、今から900年以上も前、平安時代の末期に朝廷の書物を管理していた大江匡房が書いたものとされています。
大江匡房は、『孫子』の説く「兵は詭道なり」という兵法が日本人のスタイルに合わ
ないと考えたようです。
ですから『闘戦経』は、「真鋭を説く」と書かれているそうです。つまり、「正々堂々
と戦うこと」が大切だということです。
さて、この『闘戦経』には人材育成に関する項目も多々あります。
中でも、「心に因より気に困る者は未だしなり。心に因らず気に困らざる者も未だし
なり。知りて知を有たもたず、 慮おもんばかって慮りを有たず。ひそかに識りて骨と化し、骨と化して識る。」という言葉は、現代でも十二分に通用する考え方だと思います。
これは、骨にまで達した知識でないと役に立たないということで、つまり、どのような状況であっても通用する知識があり、それを活用できる技能、そして、活用しようとする態度が必要なのです。
コーチングのキモ
後継者育成の重要性
戦国武将の後継者育成を省みたとき、企業における後継者育成の重要性が明らかになってきます。
特に、織田・豊臣・徳川を比較した際に、その重要性が際立ってきます。
また、前田利家の妻まつが、息子の利長に告げた言葉は、現代の経営者にも通用すると思われます。
「武士の責務は家を立てること」
つまり、「経営者の責務は会社を存続させること」にあるということだと思います。
そのためには、人を育て、優れた知識と技能、そして、誰からも愛される人間性を有する後継者を育成する必要があるはずです。
新入社員の時から、会社への愛情を抱くことのできる人を育てる、今、どの企業にとっても重要な課題になっていると考えられます。
インストラクショナルデザインの歴史的背景
インストラクショナルデザインを構成する重要な要素の一つである学習理論は、第二次大戦中の米国において、バラス・スキナーらの研究などを中心にした行動主義心理学の知見を基に、効果的に学習者の行動変容を促すためのノウハウとして蓄積されていきます。
そして、米国の教育心理学者ベンジャミン・ブルームにより、学習目標を知識・技能・態度に分類することと完全習得学習という考え方が、その後の学習理論の発展に大いに影響を及ぼすことになりました。
また、行動主義心理学の理論を中心に発展してきた学習理論でしたが、スイスの心理学者ジャン・ピアジェの登場で、認知主義心理学を反映させていきます。そして、コンピューターの登場が、人間の認知過程を「情報処理」と見立てて考えるモデルが提案されていきます。
その後、学習に関する学際的な知見を取り入れる積極的折衷主義の立場で知見を蓄えていき、ロバート・M・ガニェの登場でインストラクショナルデザインが形をなすことになりました。
インストラクショナルデザインについて
日本企業における人材育成の現場では、大企業はともかく中小企業においては、人事部門や場合によっては総務部門の片手間のような仕事になっていることが多いようです。
しかし、2000年頃からeラーニングの普及に合わせて認知されはじめた「インストラクショナルデザイン」が企業の人材育成、特に教育のあり方に一石を投じました。
これから、学習のプロセスを支援することに焦点化するインストラクショナルデザインの考え方についてご紹介していきたいと思います。