「仕事が速い人」と聞いて、何を思い浮かべますか?
タイピングが速い、処理が早い、集中力がある——そういうイメージを持つ方が多いと思います。
でも、2026年3月5日にDIAMOND Onlineに掲載されたタスク管理専門家・萩原雅裕さんの記事は、少し違う見方を示しています。
仕事が速い人とは、作業が速い人ではなく、「こうすれば終わる」という道筋を高速で作れる人だ、と。
伸びる20代と伸びない20代の、たった一つの差
記事の結論はシンプルです。
分からない箇所が出たとき——止まるか、仮置きして進むか。ここが分かれ道だというのです。
経験が浅いうちは、途中が分からなくて当然です。問題は、そこで思考が止まって「全部分かってから動こう」としてしまうこと。伸びる若手は、分からない部分を「仮置き」して全体像を先に作り、詰まった一点だけをピンポイントで質問できます。
「止まる前に、終わる形にしてから相談できるか」——これが決定的な差だ、という話です。
これ、若手だけの話じゃない
組織の視点で読むと、もう一つ重要なことが見えてきます。
「終わらない→残業で帳尻合わせ」という流れは、実は計画不足から来ているケースが意外と多いです。能力の問題ではなく、道筋を描く習慣がないまま着手してしまうことで、迷いや手戻りに時間を溶かしているのです。
時間外労働には法律上の上限があります(原則として月45時間・年360時間)。この枠の中で回る仕事の設計を考えるとき、若手の「段取り力」を底上げすることは、成長支援であると同時に、長時間労働の予防策にもなります。
「仮置き」を使った質問の型
新人研修やOJTで、こういうテンプレートを渡すだけで変わることがあります。
- ゴール——成果物の形と期限は何か
- 工程の分解——自分なりに手順を並べてみる
- 仮置き——未確定の前提を明示する
- 質問は一点突破——「この工程の妥当性」「この作業の相場時間」など、一カ所に絞る
「前後は考えたうえで、ここだけ詰まっている」が伝わる質問ができると、上司も答えやすくなります。逆に、何も整理されていない「丸投げ質問」は、忙しい職場ほど詰まりやすいのです。
管理職が変えられること
相談の「回数」を評価しないことも大事です。質問が多い若手を「何度も聞いてきて困る」と感じるより、相談の持ち込み方(仮置き+全体像があるか)を評価軸にすると、育ちのスピードが変わります。
また、「早めにやって」という指示より「終わる計画を〇時までに共有して」と具体化するだけで、若手の動き方は変わりやすいです。
行動科学でいう「実行意図(if-then)」——「〇〇したら、まず△△をする」というトリガー設計も、目標達成に効果があることがメタ分析で示されています。朝イチでPCを開いたら今日の最重要タスクを3行で分解する、会議が終わったら次アクションをカレンダーに入れる、といった小さな仕組みが、習慣化の土台になります。
よくある疑問
「仮置き」と「適当に進める」は何が違いますか?
未確定であることを自覚して明示し、後で検証・修正する前提で置くのが仮置きです。適当は未確定のまま流して手戻りになりがちです。
若手に「計画しろ」と言うと、かえって遅くなりませんか?
最初は少し遅く見えることがあります。ただ、迷い・手戻り・相談の往復が減るので、トータルでは速くなりやすいです。
残業が多いのは本人の段取り力の問題?
本人要因もありますが、業務量・締切設定・突発対応など組織要因も大きいです。まず設計を見直すことが先決です。
まとめ
若手の「段取り力」は、根性論より型と運用で伸びます。
「分からなければ止まる」から「仮置きして全体をつなぎ、詰まった一点だけ聞く」へ——この小さな習慣の違いが、1年後・3年後の差になります。
組織として「終わる計画を作る文化」を育てることは、若手の成長にも、長時間労働の予防にも、両方効く投資だと思います。
参考:DIAMOND Online「将来伸びる20代と伸びない20代を分ける"決定的な差"」(萩原雅裕、2026年3月5日)/厚生労働省・時間外労働の上限規制