オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

AIは使われているのに、組織は変わっていない ──「個人先行型AI活用」の限界と、人事に問われる再設計

日本の人事部に『「AI時代における人事・組織の実態調査」を実施』という記事が掲載されていました。

jinjibu.jp

調査を読んで、正直こう感じた方も多いのではないでしょうか。

「うちの会社、そのままだ……」

生成AIはすでに個人レベルでは当たり前に使われている
しかし、組織としてはほとんど変わっていない
この“ねじれ”が、数字ではっきり示された調査でした。


■ 個人は進み、組織は止まっている

今回の調査で、最も象徴的だったのがこの対比です。

  • 業務でAIを「ほぼ毎日」使っている個人:68.2%

  • AIを業務プロセスや制度に組み込めている企業:18.9%

つまり、多くの企業は、

  • 使える人は勝手に使っている

  • 使わない人は置き去り

  • 組織としての設計は未着手

という「個人先行型AI活用」の状態にあります。

これは一見、問題がないように見えます。
でも実は、ここに大きな落とし穴があります。


■ なぜAI活用が“根づかない”のか

調査では、活用が進まない理由として次が挙げられていました。

注目すべきは後者です。

単に「AIが分からない」のではなく、

  • 何のために使うのか

  • どこで使うのか

  • 使った結果をどう評価するのか

設計されていない

現場からは、

「AIを使うこと自体が目的化している」
「使えと言われるが、判断基準がない」

という声も上がっています。

これはスキルの問題というより、組織デザインの問題です。


■ 人事部門の現在地は「採用止まり」

人事領域では、AI活用が進んでいる分野もあります。

一方で、

  • 制度設計

  • 評価

  • タレントマネジメント

といった「人事の中枢」には、ほとんど届いていません。

さらに深刻なのが、

  • 人事部門でAI活用を担う体制が「ない」:61.1%

つまり人事は今、

「忙しいので後回しにしている」
「分かる人がいない」

という状態にあります。

しかし、ここを後回しにすると、組織の競争力そのものが遅れることになります。


■ 「AI導入」ではなく「組織OSの更新」

調査を実施した株式会社コーナーの代表・門馬氏は、次のように指摘しています。

これから問われるのは
「AIをどう使うか」ではなく
「AIを前提に組織をどう設計するか」

とても重要な視点です。

多くの企業は今、

  • AIを入れた(Do AI)

段階にいます。

しかし本当に必要なのは、

  • AIが前提の組織に変わる(Be AI)

という発想です。

これは、評価制度・業務プロセス・役割分担といった

「組織OSのアップデート」

を意味します。


■ 非エンジニアである人事が最初に押さえる3つの視点

「でも人事はエンジニアじゃないし……」
そう感じるのも自然です。

ただし、最初から高度なことは必要ありません。
現実的には、次の3点を押さえるだけで十分です。

① AIに仕事をさせる力

コードではなく、「どう頼めば、どこまで任せられるか」を知る。

② 出てきた結果を読み解く力

鵜呑みにせず、「これは何を前提にした数字か?」と問い直す。

③ 倫理・制度とつなぐ力

便利さよりも、「公平性・説明可能性・納得感」を守る視点。

これはまさに、人事にしかできないAI活用です。


■ まとめ:AIは「使う人」ではなく「設計する人」が鍵

今回の調査が突きつけているのは、次の現実だと思います。

  • AIはすでに現場に入り込んでいる

  • しかし、組織は追いついていない

  • このギャップを埋める役割は、人事にある

AI時代の人事に求められるのは、

便利なツールを探すことではなく
人と仕事の関係を再設計すること

なのかもしれません。

さて、あなたの職場ではどうでしょうか。

  • AIは「個人技」になっていませんか?

  • 仕組みとして語れる状態でしょうか?

この問いから、次の一歩が始まる気がします。