オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

「雑用はやりません」は本当に正しいのか ――忘年会幹事に詰まっている“仕事の本質”

東洋経済Onlineに、
『課長絶句・・・「雑用はやりません」「庶務の人に任せるべきです」
忘年会幹事を断った《1年目の新入社員》のまさかの“言い分”』
という、考えさせられる記事が掲載されていました。

toyokeizai.net

忘年会の幹事を頼まれた新入社員が、

「それは成長に繋がらない雑用です」
「庶務担当の仕事では?」

と断った、というエピソードです。

一見すると「最近の若者は…」と言いたくなる話ですが、
この記事の面白さは、感情論に流れず、構造的に整理している点にあります。


■ 若手が「幹事=雑用」と感じるのは自然でもある

記事では、新入社員が幹事を避ける背景として、次の3点が挙げられていました。

① 成長実感が見えない

営業スキルやITスキルのような「わかりやすい能力向上」に比べ、
段取りや調整は成果が見えにくい。

② タイパ重視の価値観

時間をかけた割に評価されない仕事は「コスパが悪い」と感じやすい。

③ 評価リスクの高さ

うまくやって当たり前、失敗すれば目立つ。
リターンよりリスクが大きい仕事に見える。

正直、この感覚自体は理解できます。
問題は「その仕事の意味が、言語化されていない」ことです。


■ 忘年会幹事は「マネジメントの縮図」

記事が強調しているのは、
忘年会幹事が単なる雑用ではなく、

プロジェクトマネジメントの縮小版

だという点です。

たとえば幹事には、こんな力が求められます。

  • 目的設定(何のための会か)

  • タスク分解(日程・店・予算・連絡)

  • リソース調整(人・時間・お金・情報)

  • 関係者調整(上司・同僚・店)

  • 想定外対応(キャンセル・変更)

これ、実は――
仕事の段取り力=ダンドリ力そのものです。

営業でも企画でも、マネジメントでも、
結局この力が弱いと仕事は回りません。


■ 上司が伝えるべきは「根性論」ではない

ここで重要なのは、
「昔は皆やった」「文句言うな」という話にしないこと。

記事が示しているポイントは明確です。

幹事で身につくのは
ポータブルスキルだと伝えよ

ポータブルスキルとは、

  • 職種が変わっても使える

  • 業界が変わっても通用する

  • AI時代でも価値が落ちにくい

汎用的な仕事力のこと。

厚労省の整理でも、

  • 現状把握

  • 課題設定

  • 計画立案

  • 調整・交渉

  • 多様な人との関わり

といった力が含まれています。

つまり幹事は、

「将来マネジャーになるための
超低リスクなシミュレーション」

なのです。


■ 問題は「雑用」ではなく「意味づけ不在」

ここまで考えると、
この問題の本質ははっきりします。

  • 若手が悪い

  • 上司が甘い

ではなく、

仕事の意味が共有されていない

こと。

「これは何の訓練なのか」
「どんな力が身につくのか」
「次の仕事にどうつながるのか」

これが語られないままでは、
若手が「雑用扱い」するのも無理はありません。


■ これからの育成で大切なこと

これからの時代、

  • 雑用だからやれ

  • 修行だから耐えろ

は通用しません。

代わりに必要なのは、

  • 意味づけ

  • スキルへの翻訳

  • キャリアとの接続

です。

忘年会幹事ひとつ取っても、

「これはダンドリ力を鍛える仕事だ」
「君の将来の武器になる」

と説明できるかどうか。

そこに、
育成の質の差が表れるのだと思います。


■ まとめ

  • 若手が「雑用」を避けるのは合理的な側面もある

  • 忘年会幹事はマネジメントの縮図

  • 身につくのはAI時代にも残るポータブルスキル

  • 問題は仕事そのものではなく「意味づけの不在」

「やらせるか、やらせないか」ではなく、
どう意味づけて渡すか

ここを丁寧に設計できる職場ほど、
育成も、定着も、静かにうまく回っていくのだと思います。