オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

「新人ガチャ」と「育成疲労」。いま現場で何が起きているのか?

ITmediaビジネスで興味深い記事が出ていました。

www.itmedia.co.jp

調査によると、新入社員の「就社志向」は過去最高の70.9%へ。
一方で、上司や先輩社員の 67.3%が“新人ガチャ”を感じているとのこと。

「安定志向の新人」と「疲れ気味の育成側」。
この構図、たしかに最近あちこちで耳にします。

今日は、この調査結果と、そこから見えてくる“育成疲労”の正体について整理してみます。


■ 新人は「会社に残りたい」。でも成長不安も抱えている

調査を見ると、最近の新入社員の多くは

  • この会社で長く働きたい

  • 自分の専門性を高めたい

  • 成果より、働き方や勤続年数も評価に入れてほしい

といった“安定志向”を強く持っています。

ここには、震災・コロナ・物価高などの経験から
「確実な未来を選びたい」という気持ちが色濃く出ている気がします。

一方で、新人側が最も不安に感じているのは 「ITスキル不足」
在宅勤務が多かった層ではこれが1位になっており、

スマホは使えるけれど“仕事のIT”は別物…」

というギャップに直面しているようです。


■ 先輩・上司側には「新人ガチャ」と「育成疲労

記事で特に印象的だったのは、育成側の以下の声。

  • 「何度教えても同じところでつまずく」

  • 「結局、自分がやった方が早い」

  • 「新人によって当たり外れが大きすぎる」

これらの背景にあるのが 育成疲労です。

● 育成疲労とは?

簡単に言うと、

“教える側が、教える構造そのものに疲れてしまっている状態”

です。

心理的には、

  • 成長実感が得られない

  • 期待とのギャップが大きい

  • 説明を繰り返す徒労感

  • 自分の業務が圧迫されるストレス

などが積み重なり、じわじわと消耗していきます。

● 本質は「個人の問題」ではなく「仕組みの問題」

調査や実務の現場を見ても、育成疲労の多くは

  • 指導が属人的

  • OJTが“ぶっつけ本番”

  • 誰に何を教えるのかが曖昧

  • 標準的な教え方がない

といった 構造の問題 によって起きています。

つまり、
“育てる側のスキル不足”というより、そもそも「育てられる仕組み」が整っていない
ことが大きな原因なのです。


■ 本来は、新人が来る前に「指導者の育成」をすべき

今回の調査結果を見て改めて思うのは、

新入社員教育よりも前に、
指導者教育が絶対に必要だ
ということ。

なぜなら、

  • 指導スキルがある

  • 伝え方のバリエーションを持っている

  • 観察力や問いかけ力がある

  • 心理的安全性をつくれる

こういう先輩が1人いるだけで、新人の成長速度は大きく変わるからです。
そして、その先輩自身の負担も軽くなります。

● 具体的には何を育てるべきか?

指導者研修のテーマとして有効なのは、

  • 「仕事の教え方」

  • 「質問より観察から入る指導」

  • 心理的安全性のつくり方」

  • 「叱る・伝える・待つ の切り替え」

  • 「新人特性に合わせた声かけ」

  • 「自分で考える余白の残し方」

など、“新人が学びやすい場をつくるスキル”です。

育成疲労の多くは、
「うまく教えられない → 伝わらない → やり直し → 疲れる」
という悪循環から生まれます。

逆に、指導方法を体系的に学ぶと、

「こう教えればいいのか」
「進捗の捉え方がわかった」
「悩むポイントが予測できる」

といった“成長実感”が得られ、疲労が減り、自信が戻ってきます。


■ いま、現場で必要なのは「指導者への先行投資」

新人に何かを求める前に、
まず 育てる側を整える

これは、職場づくりの“抜け落ちてきた部分”かもしれません。

  • 新入社員が安心して動ける

  • 先輩社員が無理なく育成できる

  • 組織として新人を育てる文化が根付く

この三つが揃うと、「新人ガチャ」という言葉は自然と使われなくなります。

育成環境は、偶然ではなく“設計”です。

今年の新入社員がどうこうではなく、
「育成する組織の筋力」そのものを鍛える時期なのだろうなと、記事を読んで改めて感じました。