オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

新入社員の過半数が「成果主義より年功序列」を望む理由

2025年度の新入社員調査で、「成果主義より年功序列を望む」と答えた人が 56.3% に達しました。
1989年の調査開始以来初めて、成果主義を上回る結果です。

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「挑戦よりも安定を選ぶ」——この選択は怠けや保守ではなく、時代背景を映し出す合理的な判断だと言えます。


若者が「安定」を選ぶ背景

  • 不確実な時代の経験
     震災・コロナ・国際情勢など、予測できない出来事を学生時代から体験。将来設計に慎重になっています。

  • 待遇重視へのシフト
     給与や福利厚生など生活に直結する要素を最優先。仕事内容や企業文化は後回しになりがち。

  • 挑戦より安心
     安定収入や長期雇用を前提に、キャリアを組み立てたいという意識が強まっています。


成果主義への不信感

成果主義はフェアに見えても、実際には課題が多いと感じられています。

  • 短期的成果に偏りやすい

  • 協働や知識共有といった“見えにくい貢献”が評価されにくい

  • 将来設計が立てにくく、不安定さがつきまとう

その結果、若者にとっては「報われにくい制度」という印象が定着しています。


年功序列の合理性

一見、古い仕組みに見える年功序列ですが、学術的にも合理性が指摘されています。

  • 経済学:ディファード・コンペンセーション理論(勤続で昇給 → 長期的な努力を維持できる)。

  • 経営学:企業特殊的資本の蓄積(ノウハウや人脈が組織に残る)。

  • 心理学心理的安全性(安定が挑戦の土台になる)。

つまり、年功序列は単なる「保守」ではなく、組織を支える仕組みでもあるのです。


ネットの声に表れる“本音”

  • 成果主義って給料下げやすい口実では?」

  • 「どっちか極端じゃなくて、いいとこ取りが理想」

  • 「スキル不足を自覚してるから成果主義だと困る」

  • 「安定は欲しいけど、働かないおじさんが高給取りなのは納得できない」

要は、成果主義そのものではなく、日本型成果主義の運用への不信感が根底にあるようです。


まとめ —— 「安定」と「挑戦」を両立する制度設計へ

新入社員が「年功序列」を望むのは、挑戦心がないからではありません。
不安定な時代に生きてきたからこそ、合理的に“安定”を選んでいるのです。

これから企業に求められるのは、

  • 長期的な安定を保障しながら

  • 成果や努力も正当に評価する

そんな 「安定」と「挑戦」のハイブリッド制度 ではないでしょうか。

あなたなら、キャリアを考えるときに 「安定」「挑戦」、どちらに重きを置きますか?
そして、それを後押ししてくれる制度や環境は、今の職場に整っていますか?