最近、DIAMOND Onlineでキーエンスの営業組織に関する記事を読みました。
粗利率80%、営業利益率50%超という圧倒的な収益性を誇るこの企業には、「仕事ができない営業マン」がいないと言われています。
なぜか?
表面的な「営業のテクニック」だけではなく、パーパス(存在理由)、プリンシプル(原理原則)、プラクティス(日々の具体行動)が、強く一貫してつながっているからだと言います。
パーパスを「単なるお題目」にしない
キーエンスは、ただ「売上を伸ばせ」と言っているわけではありません。
「最小の資本で最大の付加価値を生む」という明確なパーパスを掲げ、それを社員一人ひとりが営業現場で体現できるように、徹底的な仕組みがあります。
ロープレ、ガイホー、営業同行といった現場主義の徹底。
コール数、商談準備のフォーマットなどの行動指針の細かい規定。
無駄なネットサーフィンさえ排除する、まるでプロスポーツチームのような規律。
これが、「誰がどの企業を担当しても結果を出せる」営業組織を生んでいます。
形骸化するパーパス、機能するパーパス
一方で、同じDIAMOND Onlineには、「パーパスにクレド…もうお腹いっぱい!」という記事もありました。
こちらでは、多くの企業で「パーパス」「ミッション」「バリュー」などのカタカナ語が氾濫し、社員に意味が浸透しない現状が指摘されています。
「パーパスは存在理由」「理念は内面的信念」…言葉の意味は理解できても、それが社員の日々の行動にどう結びつくのかが曖昧だと、単なる標語になってしまいます。
本来、パーパス経営の要は、「社会や顧客にどんな価値を届けるのか」という視点にあります。
この視点を、リーダーが行動で示し、社員が自分の業務と結びつけて考え、行動できるようにする。
これがない限り、いくら立派な言葉を掲げても形骸化するのは当然です。
理念を機能させるための「キーエンス流3P」
今回の記事を読んで、キーエンスの強さは「3つのP」に集約されると感じました。
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Purpose(パーパス):存在理由が明確で、社会への価値提供と利益の最大化が一致している。
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Principle(原理原則):付加価値の最大化、無駄の排除、本質的思考という軸がぶれない。
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Practice(具体行動):全員がそれを実践できる仕組みと習慣が徹底されている。
つまり、言葉だけではなく、「やるべきこと」が誰の目にも具体的に可視化されているのです。
「理念経営」が注目される時代だからこそ
最近、さまざまな企業が「理念経営」や「パーパス経営」を掲げるようになりました。
これは、組織が多様化し、働き方も価値観も多様になった今、
みんながバラバラの方向を向かないようにするために、共通の“軸”が必要だからです。
しかし、その軸をただ紙に書いて壁に貼るだけでは意味がありません。
キーエンスのように、
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理念を言葉だけでなく「具体的な行動」に落とし込む
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行動を徹底する仕組みを作る
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全員が迷わず同じ方向を向ける「原理原則」を明文化する
これこそが、本当の意味での「理念が生きている状態」だと思います。
カタカナ語に振り回されないために
パーパス、ミッション、バリュー、クレド…。
言葉を導入すること自体が悪いわけではありません。
大切なのは、その言葉を日々の現場にどう結びつけるか。
そして、社員一人ひとりが「自分の仕事」と繋げて考えられるかです。
それができなければ、どんなに立派な言葉を並べても、「お腹いっぱい」と社員が白けてしまうのは当然でしょう。
まとめ
「理念経営」は、これからの時代の企業経営に欠かせない考え方です。
でも、それを“看板”だけにしないためには、キーエンスのように、パーパス・プリンシプル・プラクティスの3つを揃えてこそ意味があります。
私たち自身も、職場で「うちの理念は、私の仕事にどう関係しているんだろう?」と自問してみる。
その問いこそが、理念を形骸化させない一歩なのだと感じます。