DIAMOND Onlineに、京都産業大学の高尾義明教授が解説する『ゴミ箱モデル』の記事が掲載されていました。
「ゴミ箱モデル」とは、組織の意思決定が、問題・解・参加者・選択機会という4つの要素が、たまたま混ざり合って進むという現実的な記述モデルのこと。
要するに、組織は本来の規範どおりに論理的に物事を決めているわけではなく、混沌とした状況の中で、「とりあえず、これで行こう」という形で進んでいることが多いというものです。
方針があいまいだからこそ求められる「やり過ごし」
多くの職場で、「上からの指示がふわっとしている」「誰が決めるのかが曖昧」「問題があっても誰も手を挙げない」――こうした経験を持つ方は少なくないはずです。
そんな中、仕事ができる人ほど実は「何でもかんでも全力対応しない」「曖昧な指示は状況を見てあえて“やり過ごす”」という柔軟さを持っています。
高尾教授も、上司のあいまいな指示を鵜呑みにするのではなく、
「これは今、ちゃんと進めるべきことか?」
「他にもっと大事なことはないか?」
と状況を見極めて、一度“保留”にしてしまうことが、結果として組織全体にとってプラスに働くと述べています。
「やり過ごし」が生んだイノベーション
記事では、ポストイットの開発事例が象徴的です。
当初は接着力が弱い失敗作だった糊が、後に「貼って剥がせるメモ」という解として生まれ変わったのは有名な話です。
つまり、計画的に問題を設定し、解を導くのではなく、偶然生まれた「解」が後から「問題」と結びつく形で価値を生むこともあるのです。
VUCAの時代、これを逆に強みに変えるのが「ゴミ箱モデル」の真骨頂だと言えるでしょう。
「できる社員は『やり過ごす』」という知恵
さらに、ITmediaエンタープライズの記事では、高橋伸夫氏の著書『できる社員は「やり過ごす」』についても紹介されていました。
ここでいう「やり過ごす」とは、単なるサボりではありません。
むしろ、上司の一言一句を真面目にすべて実行するのではなく、長期的な組織の利益や自分のエネルギー配分を考えて、取捨選択しながら動く姿勢です。
日本型の年功序列や、失敗を許容しつつもフォローする中間管理職の存在は、この「やり過ごし」を育む土壌だったのかもしれません。
一方、成果主義の企業でも、成果を上げた人材に見通しの良いキャリアパスを用意することで、「やり過ごす」余裕を持たせつつも、結果を出す仕組みが機能しています。
「スルー力」という現代の処世術
一時期、「スルー力」という言葉が流行しました。
要は、何でもかんでも真に受けて反応していると、体力もメンタルもすり減ってしまう。
だからこそ、状況を見て受け流す力を持つ人が、結果として安定して成果を出し続ける――。
「ゴミ箱モデル」も、「できる社員は『やり過ごす』」も、根底にあるのはこの「スルー力」に近い考え方です。
真面目すぎる人ほど、ちょっとだけ肩の力を抜いて
もちろん、すべてを適当にやり過ごせば良いわけではありません。
信頼を得るには「ここはやり過ごさない」という大事な場面を見極める目も必要です。
そして、「あの人なら大丈夫」という信頼残高を日頃から貯めておくことも欠かせません。
だからこそ、「真面目に頑張りすぎて疲れてしまう」という人ほど、
時には「これ、本当に今やるべきか?」と立ち止まる勇気を持つのが大切です。
まとめ
VUCAの時代、すべてが計画どおりにいかないのが当たり前。
だからこそ、「やり過ごす力」や「スルー力」は、柔軟に変化に対応するための武器になります。
がむしゃらに頑張るだけではなく、力を入れるところと抜くところを見極める。
そんな大人の処世術を、私も自分の中に少しずつ育てていきたいと思います。
一時期、「スルー力」という言葉が注目されましたが、通じるものがあるのかもしれませんね。