オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

そもそも「学び」って何?

弊社は主に「人の学び」に焦点を当て、「人の学び」を支援することで組織の生産性向上などのお手伝いをすることを目的として業務を行っております。

ところで、「学び」とは何?と訊かれたらどう答えますか?

「知らないことを知ること」?「出来なかったことが出来るようになること」?

元々の学習の定義は「行動が変化すること」とされていました。

しかし、時代が進むにつれ、学習の定義は変わっていきます。

www.recruit-ms.co.jp現在は、

–意味を理解し、記憶し、再現性のあるアルゴリズム(ある問題を解決するための手順・方法)を構築すること

–人が実践の共同体に参加することによってその共同体の成員としてのアイデンティティを形成すること

といったように単なる知識の習得や行動の変容だけではなく、社会的な側面が強調されてきています。

さらに、パフォーマンス心理学で「個人のアイデンティティの創造・変革と社会創造・変革との相互作用」といったように、個人のキャリア形成と社会との関わりに焦点が当たり始めています。

価値観の多様化する現代。

一人ひとりの価値観を大切にし、社会貢献できるスキルを身につける。

そんな学習支援環境を構築していきたいものですね。

f:id:ogaz100:20180510163850p:plain

 

新入社員研修のあり方

令和二年度新入社員研修は、諸事情により中止となりました。

検討いただいてました皆さまには申し訳なく存じます。

なにとぞご容赦の程、よろしくお願いします。

 新入社員研修に携わって17年。

いろいろな講師の研修を観てきました。

ずーっと疑問に思っていたのが、「仕事の進め方」「ビジネスマナー」「メンタルヘルス」・・・みたいに学校の教科のような形のプログラムになっていること。

仕事は流れです。

どのタイミングでどのような対応をすることが必要か、電話を取ったら何を言われるか分からない状況で、どのように対応するか・・・

新入社員は配属後、さまざまな困難に直面します。

その困難をできるだけ苦労しないで乗り越えられるようサポートするのが新入社員研修なのではないか?その疑念がずっとありました。

ビジネス文書を手書きすることある?パソコンで作るよね?

電子メール、仕事でメチャクチャ使うのに、なぜ新入社員研修で教えてくれないの?

お酒の席って細かな配慮やマナーがあるのに、どうして誰も教えてくれないの?

ラジオ体操って小学校以来やってないのに、どうして知っている・出来る前提なの?

朝礼・・・初めての体験なのに、いきなり本番突入?うそー!

などなど、新入社員の不安や悩みは多々あります。

皆さんが実施ないしは派遣する新入社員研修、そういった課題に応えてますか?

 

『弓と禅』にみる日本的指導のあり方

『弓と禅』は、オイゲン・ヘリデルというドイツ人哲学者が「ドイツ神秘主義」を完全に理解するヒントを得るため、あえて仏教を学ぶべく来日し、神秘主義の一つと見做している「禅」の修行の一環として弓道を習うことを通して、日本の「道」と「精神性」に触れたことを記した書です。

ここに書かれていることは、現代日本人にとっても神秘的に感じることが多々あると思います。なぜならば、「精神的」なるものの重要性を説いているからです。今は、武道もスポーツ化してきており、「精神的」なものは重視されなくなっているように思います。しかしヘリデルは、弓道の修行を通して「精神的」なるものを理解していきます。

ヘリデルは、いきなり難題に直面します。それは、「精神的に弓をひく」ことでした。実は、「呼吸法」が重要だったのですが、それを直接教えるのではなく、あくまでも体得させるまで実践させる指導。まさにコーチング的な指導法だと思います。

その後も師匠との禅問答のようなやりとりが続き、徐々にヘリデルの学びたかった主題に近づいていきます。

この本から、コーチングの本質は「考えさせること、自分自身で解を導き出すこと」なのだということを改めて気づかされました。
ある種、「禅問答」的なコーチングも効果があるかもしれないと思わされた良書でした。

 

新訳 弓と禅 付・「武士道的な弓道」講演録 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫) オイゲン・ヘリゲル

 

上杉鷹山の師 細井平洲が「興譲館」に込めた思い

私が尊敬する歴史上の人物の一人に上杉鷹山公がいます。

弊社の名称の由来も鷹山公にあやかりたい思いから、鷹山公が創設した藩校「興譲館」から名付けました。

さて、その「興譲館」の名付け親は鷹山公の師でもある細井平洲先生。

その名に込めた思いとして「個人個人の修養が家庭を安定させ、各家庭の安定が地域社会を安定させ、そして地域社会の安定が市や県を正しく収めさせ、それが集まって国家が正しく安定させる」ということです。

これは、古代中国の政治指導書『大学』で説かれているモチーフにインスパイアされているとのこと。

そしてこの個人から全世界に至る発展過程で、個人あるいは組織が心がけなければならないこととして「譲と仁」の二つの道徳を重視しています。

細井平洲先生は、この「譲」を「恕」という言葉におきかえて常々、説いていました。

「恕」というのは「他人の悲しみや苦しみはみるに忍びない。なんとかしてあげたい」という思いです。

興譲館」という校名には、「日本人の美しい心を興す」という思いが込められているのです。

私も「Kojo」という名を冠しているからには、「恕」の精神を忘れずに、お役立ちできるよう邁進していきたいと思います。

 

f:id:ogaz100:20160704095824g:plain

 

「ATD 2019 ICE 報告会 JMA関西共催」に参加して

令和元年7月8日(月)に開催された「ATD 2019 ICE 報告会 JMA関西共催」に参加して参りました。

当日は、オフィスあんの代表である松下さんポラソフィのシニアアソシエイツ仲間である佐々木さんの両名も一緒に参加し、共に学ぶ機会であり、本当に刺激的な半日でした。

ATDに関しては、アルドーニ株式会社さんのブログ「フリーランス人事が言いたいこと。」のエントリー「3分で理解できるATD。人材開発にたずさわっているなら、ATDを知らなければモグリかも」に詳しく書かれていますので、割愛します。

今年の本場アメリカで開催されたATD2019-ICEについては、株式会社ヒューマン・バリューさんがレポートしてくれています。

ATD2019カンファレンス・レポート

さて、関西報告会では、13:00~16:30までの短時間に凝縮してエッセンを伝えていただきました。

日本からの参加も徐々に増えているということで、日本においても人財開発への関心が高まっていると感じられたのは喜ばしいことです。

今年のATDで目立ったキーワードに「リーダーシップ」「エンゲージメント」「インパクト」というものがあったのが印象的でした。

リーダーシップに関しては、『全ての人が対等な関係の中で「リーダーシップ」を発揮しなければならない時代になってきた』というメッセージは共感できました。

そして、「インパクト」。『人財開発担当のメッセージは届いているか?』という問いは非常に重要な指摘です。

人財開発担当が独りよがりでは、誰も見向きもしてくれません。

いかに従業員に伝えるか、人財開発担当のスキルとして重要になってきているのだと感じました。

それから、「テクノロジーとの融合によって変わるラーニングの在り方」は本当に考えさせられる指摘です。

これは、今迄の「eラーニング」という概念を大きく転換する必要がある考え方です。

そして人によるインストラクションの形も変わっていくことでしょう。

これからは、情報はテクノロジーから得る、そしてそれをFace to Faceで伝承・交換する。そのサポーターとしての存在がインストラクターになっていくのかもしれません。

今回、我々にシンプルでわかりやすくご報告くださったATD International Member Network Japan代表理事で株式会社インヴィニオ エグゼクティブプロデューサーの宇野聡美 さん、副代表で株式会社インストラクショナルデザイン代表取締役の中原孝子さん、株式会社リリオール代表取締役社長の鷲見典暁さん(通称わっしー)のお三方に感謝いたします。

www.astdjapan.com

日本から「あ・うんの呼吸」が消えた?

最近、管理職向けの研修やコミュニケーションの研修では、もはや「あ・うんの呼吸」はないです!とお伝えしています。

本当にそうだと思ってはいます。

家族においても「あ・うんの呼吸」は難しくなっていると考えています。

では、自分の子供の時はどうだったか?と考えてみると、割と「あ・うんの呼吸」で問題は起きてなかった気がします。

それどころか、自分が入社したころ(昭和のころ)は、「あ・うんの呼吸」で仕事をしていたように思います。

それで特に問題は起きてなかったようにも思います。(あくまで、記憶の話なのであいまいではありますが・・・)

だとしたら、いつから「あ・うんの呼吸」が通用しなくなったのか、これはインターネットの普及と関連があるのではないか?と考えています。

情報が増える→多様な価値観が生まれる→価値のぶつかりが起こる、ないしは、異なった解釈で受け止められる

こういうプロセスがコミュニケーションの難度を上げているのではないでしょうか?

まだ、直感レベルなので検証はしていません。

今後、探求してみようと思います。

f:id:ogaz100:20180522164453p:plain

 

改めて「経路依存性」の脱却を考える

昨年の7/26のエントリーで、

わかっちゃいるけど・・・「経路依存性」が問題解決を難しくいているのかも - オフィスKojo 「伝刻の詞」

を書きました。

「経路依存性」とは、「何らかの理由で、一旦、路線が決まる。その後、その路線が
固定化されてしまい、さらに「人々がそのルートに沿って行動する」ようになってしまい、 特定の路線が強化される。」という元々はW・ブライアン・アーサーらによって展開された、 収穫逓増経済 の理論における、自己強化メカニズムの一部ですが、さまざまな状況に当てはめて考えることが可能な概念でもあります。

今までうまくいった、問題なかった、慣れた・・・さまざまな理由でこれまでのやり方に疑問を抱かず、固定化していき「当たり前」になります。
実は、QC活動は「経路依存性」を打破する優れた手法でした。
ところが、「QC7つ道具」をはじめとする方法論ばかりに焦点が当たり、形骸化していきました。結果的に、ネガティブな活動として捉えられ、徐々に活動を休止する企業が増えていってしまいました。

昨日、小集団活動のご支援をしている企業の成果発表の講評に行き、話を聴いて参りました。 
そこから聞こえてくる共通の言葉は、「今まで当たり前にやってきたけど、この活動を
きっかけに当たり前が当たり前じゃないことに気づいた」というものです。

一度立ち止まり、本当にこのやり方でいいのか?他のやりかたはないのか? と考えてみることは効果的です。
その際の発想として「今までのやり方は間違っている」と考えて見直すと違った観点が浮かび上がってくることが多いのでおすすめです。

f:id:ogaz100:20160526134503j:plain