オフィスKojo 「伝刻の詞」

「人のこと」にまつわるさまざまなできごとを本質的な視点で見つめていきます。

わかっちゃいるけど・・・「経路依存性」が問題解決を難しくいているのかも

最近の猛烈な暑さにもかかわらず、エアコンをつけなかったり、外の活動での対処を怠ったりしてしまうことで熱中症になってしまう方がいるというニュースを聞くと心が痛みます。

また、ハラスメントやいじめの問題、振り込め詐欺のような大きなニュースになった問題が解決に向かわない、女性活躍やダイバーシティコンプライアンス上の問題など「わかっちゃいるけど・・・」ということも少なくない現状です。

これらの問題、実は「経路依存性」で考えてみるとしっくりくるのではないかと考えています。

「経路依存性」とは、「W・ブライアン・アーサーらによって展開された、収穫逓増経済の理論における、自己強化メカニズムの一部」とされています。

経路依存性 | 三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba

『小さな出来事や偶然により決まった初期の市場シェアがその後も支配的になる「経路依存性」』

三橋氏の表現を借りると『何らかの理由で、一旦、路線が決まる。その後、その路線が固定化されてしまい、さらに「人々がそのルートに沿って行動する」ようになってしまい、特定の路線が強化される。』ということのようです。

例えば、以前にも取り上げた「ノック3回問題」も、「いつの間にか当たり前になってくる。そして、全国的な常識になってしまい、異論を述べると無知と見なされてしまう。」ということです。

熱中症問題も、「昔はクーラーなんかなかった、今の若い者は根性が足りない」という精神論があるといわれています。単純に考えても、私の子どものときと今では、暑さが全然違うと思います。精神論でなんとかなるレベルではありません。

また、ハラスメントなども「俺は、叩き上げでやってきた。弱音を吐くなど、今の若い者は甘い」「昔は、下ネタがスキンシップの一環だった。今の若い者は冗談も通じない」「今までこうやってやってきたのに、今さら・・・」という素朴な意識が職場風土としてしみこんでいることも一要因です。

これらの意識も「経路依存性」で考えてみるとしっくりきます。「パラダイムシフト」というと難しく感じるのですが、「時代は変わる。自分も変える」という考え方は重要なのだと考えています。

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「若者から学ぶ大人」の実態調査

株式会社 リクルートマネジメントソリューションズは7月10日(火)、『大人は若者から何を学べるか。若者に抱く”違和感”こそ学びのヒント』というタイトルで“なぜ大人は若者から学べないのか?(オトマナ)プロジェクト”における実態調査結果を公表しました。

www.recruit-ms.co.jp

その記事中で興味深かったのが、「自分よりも若い人が、思ったことを何でも気兼ねなく話せるような雰囲気づくりや接し方を意識している」で、「若者の力を引き出すためには、「自分の素を出すことへの安心感」が大事」ということです。

これは、Google社の調査でも明らかになった「心理的安全性」を問うもので、これからの職場づくりを考えるうえで重要な視点だと思います。

bizhint.jp

ハラスメントをなくすためにも「心理的安全性」の観点は大切にしていきたいものです。

「Off-JTも生産性向上にとって有効性の高い無形資産投資」

6月11日に独立行政法人 経済産業研究所『企業の教育訓練投資と生産性』という論文を公表しました。

内容は非常に興味深く、「日本企業においてOJT が重要な役割を果たしていると考えられてきたが、Off-JTも生産性向上にとって有効性の高い無形資産投資であることを示唆している」という結論は、教育訓練投資の有効性について論じており、意義があると思われます。

また、「サービス産業において人的資本投資が過小になっている可能性」について示唆されており、今後の成長戦略を考えるとサービス産業がより人的資本投資を行うことが重要であると考えられます。

さらには、「企業による教育訓練投資の果実は、企業と労働者がそれぞれの生産への
貢献に沿った割合で享受」という点も参考になる観点です。

いずれにしても、「働き方改革」を進め、生産性の向上を図るためには、教育訓練投資は有効な手段であると考えられます。

「企業は人なり」の精神で、共に成長していきたいものです。

 

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「労働生産性が高い企業は人材育成・能力開発方針が社内に浸透」

5月25日(金)に独立行政法人 労働政策研究・研修機構が、「ものづくり産業における労働生産性向上に向けた人材育成と能力開発に関する調査」報告を公開しました。

http://www.jil.go.jp/press/documents/20180525.pdf

その中で、「競争力を維持・向上していくうえで鍵となるものづくり人材のうち、現在不足していると考える人材のタイプ」を問うていて、最も高い回答を得たのが「工場管理や作業者の指導ができる工場管理者層 」(55.5%)だったようです。

つまり、管理者・指導者の不足が問題になっているということです。これは、なにも製造業に限ったことではないと思われます。

また、「競争力を維持・向上していくうえで鍵となるものづくり人材の知識・能力」としては、「生産工程を改善する知識・技能」(54.7%)とのことです。

今、企業は生産性の向上を喫緊の課題として捉えている証左といえるかもしれません。

そのうち、「労働生産性の向上」に向けた取り組みとしては、「能力開発」が主たるものですが、中でも「個々の従業員が当面の仕事をこなすために必要な能力を身につけることを目的に能力開発」ではなく、「今いる人材を前提にその能力をもう一段アップできるよう能力開発を行っている」という回答が多く、その差が顕著に生産性の向上に関連していることは興味深い結果となっています。

これは、「人材育成・能力開発」を単純に目下の課題解決の施策として取り組むのではなく、少し長い目で育成する観点、つまり、「キャリア形成支援」の観点をもって取り組む企業のほうが生産性向上を図りやすいと言うことかもしれません。

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なぜ、セクハラはなくならないか?

最近、財務次官や芸能人のセクハラ問題が立て続けに起こり、また、マスコミ関係者におけるセクハラ疑惑も取り沙汰されるなど、「セクハラ」が注目されています。

思うに「セクハラ」を根絶するための取り組み(窓口の設置や研修など)はほとんどの会社・組織で行われているはずです。

であるにもかかわらず根絶しないのは何故なのか・・・不思議で仕方ありません。

私も過去、「セクハラ防止の研修」などには参加したこともありますし、講師派遣などもしてきました。

振り返ってみると、その内容は「どこからがセクハラになるのか?」「セクハラになるのはどのような言動なのか?」などが中心的なテーマだったように思います。

そこで考えてみると、「じゃあ、ここまでだったら良いのかな?」という自分なりの解釈や勝手に範囲を設定して言動をしてしまう、という心の動きまでは抑制できていなかったかもしれません。

となると、過去のセクハラ事例などを分析し、「本来ならリスクが大きくメリットの少ない」はずのセクハラ問題を起こす心の源泉を探る必要があるのだと思います。

いろいろと調べていると参考になるサイトを見つけましたのでご紹介します。

男はなぜセクハラをしてしまうのか : 地政学を英国で学んだ

このサイトから、パワハラとセクハラはワンセットになりやすい、ということが分かります。

案外、「女性活躍」を阻む壁はここにあるのかもしれませんね。

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ロールプレイングの成果を高める

新入社員研修も一段落し、次のステップとして管理者研修などが増えて参りました。

新入社員研修でも、管理者研修でも、「ロールプレイング」という研修技法は効果と効率を高めるうえで優れています。

しかし、通常の研修では、インストラクターは一人であることが主流です。

そんな中で、より効果的な「ロールプレイング」を目指すには工夫が必要になります。

今回、師匠である鈴木教授が「IDマガジン」でそのヒントを提示しており参考になりました。

そもそも、「ルーブリック」という言葉は聞き慣れないと思います。

ざっくりいえば、「職能等級基準」のようなもので、技能レベルを把握するために使用します。

「評価のためではなく、効果的な学習のために」チェックリストやルーブリックを活用したいですね。

<Vol.0073> IDマガジン 第73号

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「副業」について考える

エン・ジャパン 株式会社は、5月16日(水)に『正社員3000名に聞く「副業」実態調査』結果を公表しました。

corp.en-japan.com

この結果で興味深いのは、『88%の方が「副業に興味あり」。』という回答です。

そして、その理由の1位は圧倒的に「収入のため」ですが、2位と3位は「スキルアップ」と「キャリア」で、いずれも2割程度の回答があります。

つまり、「今の仕事以外にも従事したい」という希望がみてとれます。

これは、キャリア形成指向の変化があると考えても良いかもしれません。

働き方改革」が進んでいくと、「ダブルキャリア」が当たり前の時代がくると思われます。

そして、ダブルワークにおいていかにシナジー効果を発揮させるかも重要になってきそうです(もちろん、守秘義務に関してはさらに工夫が必要ですが・・・)。

一方、『副業をする際の難しさ第1位は「時間管理」』ということです。

これも、「働き方改革」のキモも「時間管理」であることを考えると、さまざまな課題を同時進行で解決していく必要があると考えられます。

まだまだ、副業禁止の会社も多いようですが、今後、徐々に解禁されていくことと思われます。

社内の制度整備など、先手を打って取り組む企業が発展していくかもしれませんね。

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